奇妙な臨死体験
当時、バイクにハマっており、休日はいつも街中を走り回っていました。
そんなある日、いつものようにバイクで走っている時に不意に子供が道路に飛び出してきました。
「危ない!」と咄嗟に避けたまではいいんですが、道路わきの電柱に見事に衝突。自分はそこで意識が途切れましたが、後で聞いた話によると通行人の方が救急車を呼んで下さり病院へ。そこで治療を受け(これも後で聞いた話ですが、医者によると生きるか死ぬかの瀬戸際だったらしい)、暫くした後に退院。
当時、自分はアパートに一人で住んでおり、入院する前は自分の部屋の両隣は空室だったんですが、退院して帰ってくると左の部屋に初老の夫婦が入居していました。で、帰った時にたまたまそのお二人と出会い、簡単に挨拶したんですが、向こうからは「久し振りだね」との返答が。
「うん?どっかで会ったけ?そう言えば何処かで見たような…」と思ったんですが、何処で会ったのか思い出せず、そのまま数日経過。
その後は会社に行って、皆に事故で入院して仕事に穴を空けた事を謝ったりし、忙しく過ごしているうちに以前の日常が戻ってきました。
それから暫くは何事もなく過ごし、とある日曜の夕方、隣の部屋の初老の夫婦と廊下でばったり出くわしました。世間話をしている途中で何処で会ったのか気になり…
「あなた方の顔に見覚えがあるんですけど、何処かで会いましたっけ?」と聞いたんですが、相手ははぐらかすばかり。
そのまま話し込んでいたらちょうど夕食の時間になり、「お腹空いたな~そろそろ切り上げるか~」と思って部屋に戻ろうとしたら、奥さんから、「これから鍋するけど一緒にどう?」と誘われてその方達のお部屋に招かれました。
部屋に入ると、部屋の真ん中に机がポツンと置いてあり、慣れたように2人はその周りに座りました。
そして、「君も早くここに座りなさい」と座布団を差し出してくるご主人。
自分は座ろうと思ったんですが、何かイヤ~な感じがして躊躇っていました。そんな自分に、「早く座りなさい」とご主人と奥さんが2人がかりで急かしてきました。
「なんだかな~」と思いながら座ろうとしたら、急に後ろから誰かに腕をグイッと引っ張られました。
振り向くとそこには大学時代の友人のAの姿が。
でもおかしいんですよね。Aは大学卒業前に、車の事故に巻き込まれて亡くなっているんです。
「え?何でお前がここに…⁉」と半ばパニックになっていると、Aが…
「何でお前がここにいるんだ⁉お前はまだここに来るのは早いだろっ!」
そう言って強引にグイグイと玄関まで引っ張られ、「2度と来んな!」と外に放り出されました。
で、目が覚めたら自分は病室にいました。全く状況が掴めずに周りを見ると、家族やら友人やらに取り囲まれてて、皆が涙ぐんでいました。
どうも話を聞くと生死の境を彷徨っていたそうで、危うく死にかけていたところで急に目が開いたらしいです。
つまり今まで見ていたのは、夢というか臨死体験みたいなものだったんだと思います。
といっても夢?の中では1年くらいは経過していたんで、かなりの時間を過ごした記憶があるんですけどね。仕事にも復帰してたわけですし。
これが臨死体験だとすると、Aは助けにきてくれたんでしょうか。
で、何がゾッとしたかと言うと、あの中で出てきた初老の夫婦って、かなり前に亡くなった保育園の園長先生とその奥さんだったんですよね(これは後で過去のアルバムを見て思い出しました)。
つまり、あの時、あの座布団に座っていたら自分はどうなっていたのか…。というか何故、長い間会っていなかったのに出てきたのか…。
今思い出してもちょっとゾッとしますね。
投稿者 まつもと 様
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